U.M.I Film Makers 航海日誌

映画製作ユニット「U.M.I Film Makers」の活動の日々を記した航海日誌です。

船長の航海日誌55~マルチカメラ撮影のお話

こんにちは!船長の武信です。

いよいよ明日季刊ライトシネマ冬号・中野守監督作品『遺言』上映です。
前回の秋号・竜崎だいち監督作品『逡巡レインボー』とは全く違う方向性の作品に仕上がっているのですが、撮影監督(内容じゃなくて映像そのもの監督する人だとざっくり思ってもらえたらOKですw)的な視点から言うと、そもそも撮影方法からして全く違えていました。

『逡巡レインボー』はオーソドックスな予め絵コンテを描いてワンカット毎に撮影していく方法で、こちらは絵画的な構図を決め打ちで撮影する時に向いた方法です。
全編キラーショットみたいな作品を目指したいならこちらがオススメ。

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一方、今回の『遺言』は基本的にはコンテを描かずマルチカメラで4台一斉に回して収録し、何ターンか繰り返してもらって必要な素材が揃ったらそのシーケンスは完了…という方法で撮影しました。
単純に計算すると1回OKが出たら4通りのOKカットが揃うので、3回OKが出たら12通りもOK素材が集まるという撮り方ですw

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この撮影方法は俳優さんの演技に乗っかって臨場感溢れる編集で映像を組む事が目的で、ぶっちゃけ1カット1カットがどんな絵になるかはよく判らないままに撮影が進行していく事もあります。
…というか下手にどうなるか判るより判らん時の方が臨場感出たりするw

広範囲の屋外撮影などではこの撮り方をすると照明が大規模になったり、制御できない要素(通行人とか天候とかw)が増えるので、予算がいくら有っても足りなくなって小規模予算の映画では非効率的ですが、ワンシュチエーションの室内劇とかだと逆に低予算で撮影日数が少な目でも厚味のある映像が作れます。

実はこの撮影方法はお陰様で先日好評の内に配信が終了したばかりのP・T企画『名探偵たちの白昼夢』で導入してみて非常に効果的だったので『遺言』でも採用してみました。

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長めのシーケンスを何度も繰り返して撮影することになるので慣れてない俳優さんだと負担大きいかも知れませんが、舞台俳優さんがメインの作品だと皆さん普段からやってる事なので結果こっちの方が撮影速度も早くなったりもしますし、何より群像劇的にそれぞれの俳優さんが自律的に動いてると、こちらの予想を上回る面白い素材が無茶苦茶沢山手に入るんですよねw
P・T企画然り、中野劇団然り。

というわけで映像作品を作ろうと思ってる舞台人の方、この方法おすすめですよ!w

笑いに貪欲な中野劇団と客演の俳優さんの演技、理性的な中野監督の脚本と演出、それらが細かく沢山積み上がった物凄く重厚な映画になっている『遺言』、無茶苦茶主白いので是非御覧ください!!!
(…あ、内容は大変軽めですw 念の為www)



youtu.be
【あらすじ】
お通夜の夜、人生ゲームで遺産配分を決めろという遺言で揉めまくるとある家族のハイスピード・ハイテンション会議ムービー!

【監督】
中野守(中野劇団)

【撮影監督】
武信貴行(U.M.I Film makers) 

【出演】
三条上ル
真野絵里
桐山泰典
川原悠
延命聡子(以上、中野劇団) 土肥希理子
長橋秀仁
神藤恭平(DanieLonely)
北川啓太


【詳細】
日時:2020年12月8日(火)20時~

場所:大阪 日本橋 インディペンデントシアター1st
   (大阪市営地下鉄堺筋線 恵美須町駅 1A出口 右手(北)8分)

料金:一般2000円 学生1000円
*本編35分+アフタートーク20~30分

上映会&トーク 

https://www.quartet-online.net/ticket/nakanoyuigon


LIVE&アーカイブ配信

https://v2.kan-geki.com/live-streaming/ticket/155