U.M.I Film Makers 航海日誌

映画製作ユニット「U.M.I Film Makers」の活動の日々を記した航海日誌です。

船長の航海日誌141~『さなぎの猫』SFよもやま話②~宇宙人

こんばんは。船長の武信です。
前回のSFよもやま話①は映画の軸になるSF設定の方向性について書きましたが、軸が決まったので今回は細部の設定のお話です。
盛大にネタバレしながらのお話になるので未見の方はご注意ください。
「観る気無いから読むわ」という方がもしおられて読んで興味湧いたら観てくださいw



『さなぎの猫』のSF軸「猫島であり限界集落でもある瀬戸内海の佐柳島に未知の科学技術で作られた謎の道具を持った宇宙人が現れたらどうなるか」の中で具体的に設定の必要な項目は3つ。
「未知の科学技術」「謎の道具」「宇宙人」です。
『さなぎの猫』は根本が人間(宇宙人含む)ドラマなので先ずは「宇宙人」から設定しました。

宇宙人

脚本上で…

  1. 宇宙人
  2. 本来の姿は猫型
  3. 母星からたった一人で移住してきた
  4. 一億円持っている
  5. その一億円は未知の科学技術によって作られた偽札
  6. 移動手段はロケットなどではなくワームホール


…辺りは言及されているのでこれを膨らませていきます。
「膨らませていく」と書くと「後付かよ!」と思われると思いますが、まあ、その通りですw
ただ映画は物語だけで出来てる訳じゃないので、ここから膨らませたSF設定を映像に落とし込むのにこの設定をしておく必要があるのです。(理由は前回述べた通りです)


最も映像に影響するのは「本来の姿は猫型」という点。
じゃあ今画面に写っている花子は一体何なんだよ?というのは映像としてとても重要な点なのでコレを最初に決めました。
…が初手の一手なのでぶっちゃけ何でも良いと思いますwww
物体Xみたいに細胞を変形させて実際に肉体が人型に変形をしているというのもイイですし、機械のようなパーツが原型の猫に組み合わさって人体を構成しててもイイのでないでしょうか。
今回選んだのはこれ!

実体はずっと猫型のままなのだが登場人物や観客は花子に何らかの方法で人型の幻影を見せられており人だと思っている。


これを選んだ理由はズバリSF設定担当の僕の趣味ですw
「儚くてイイじゃんね?偶に幻影見せるのに失敗しちゃったりしても可愛いし!君もそう思うだろう???」…って素直に思えるのでこれを採用w
これが物体X系だとそうはならないw
失敗したらドロドロのネバグチャの汚物の塊ですよwww
嫌いじゃないけど今回はヤダwww


失敗する(しそうになる)ところを見せたかったので「どこか重要なシーンでは幻影体が消え掛かる」のを仕込もうという話になり、どこに入れるのが良いか監督と検討した結果ドラマ中心の映画なのでドラマを盛り上がらせたいシーンに入れようとなり、花子が窓から夜空を見上げながら自分の身の上を話すシーンに入れる事がまず決定。

該当場面
本体の感情が不安定になったりすると幻影体のほうも不安定になるというSF設定がここで出来た訳です。
これに関しては脚本が上がった直後くらいにサクサク決まってたのでメイクのKOMAKIさんのアイディアで花子の首筋にボロボロのキューピー人形をイメージしたラメのメイクをして貰って撮影しました。


…が、実は撮影時に「幻影体」に関してやったのはコレだけですw
良いのか?
…良いんですw
だって設定はもう出来たので後はコレを忘れないようにちゃんとポスプロでディテールに反映させて行けばw
ここは最終的には段々メイクが浮かび上がる様にデジタル処理して、上からTVのノイズのようなザッピングノイズを合成して「幻影体が不安定」の効果を作りました。
そして効果が決まったら後は「感情が不安定になると幻影体も不安定になる」べきシーンに忘れないようにこの効果を入れていきます。


ただし他の登場人物にハッキリとそれが見えてしまう様な箇所には入れる訳にはいかないし、機械的に全部のシーンに入れたりすると五月蠅いし…で最低限ここにある方が良いかなという所にだけ入れました。
さあこれで宇宙人のSF設定とその映像化は終わり!


…という訳には行きません。
最初に設定した「実体はずっと猫型のままなのだが登場人物や観客は花子に何らかの方法で人型の幻影を見せられており人だと思っている」を読んでもらった段階で「何らかの方法ってなんだ!」と多くの人が思ったと思うのですが、その通りでここを放置しておくと後々穴になりそうなのでここは考えますw
普通に思いつくのは「謎の機械に幻影を見せる能力がある」なんですけど、序盤の状態だと花子と機械は離れ離れになってるのでその設定は使えない。
…ので今回は猫星人は地球の狸や狐のように他者に幻を見せる能力を持つ種族ということにしました。
完全につじつま優先の後付けで生まれた設定ですが、設定した以上はこれも映像に反映させたほうが面白いだろ!…ということで花子自身が気づいてないせいで時々幻に手抜かりがあるというディテールを映像の方に加えてます。



具体的には花子に自覚がないせいで暗い所だと猫のように目が光ってしまっていたり、足跡が猫のままになっていたりしますw
あと監督の発案で音響の方でも花子の足音は出来るだけ抜いてもらいました。
まあ実際には足跡は最初は幻影体の不安定化の方の効果(が出来る前だったのでその簡易的なやつ)を加えてたら野村監督からNGが出たのでその代替案としてこっちの設定の方を使うように変更になったんですがw
でもこのカット個人的には可愛いらしくてミステリアスなのでとても気に入っています。
SF設定は色々考えておくに越したことはないんだよな、と思いましたw


これくらいで映像効果を入れたカットは数がそこそこ揃ったので「宇宙人」に関するSF設定はこの辺にして、次は「宇宙人」の次に重要な「謎の機械」について決めていきます。
次回はそのお話をば。
宜しければ引き続き読んで頂けましたら幸いです!



【花子(宇宙人)】
遠い異星の猫型知的生命体で地球の狸や狐のように他者に幻影を見せる精神感応能力を持つ生物から進化して文明を発達させた種族の一人。
その能力を使って本体とは違う姿の幻影体を他者に見せて他の生物に擬態する事が可能だが、精神感応能力は本体の精神状態や健康状態に左右される為、常に上手くいくとは限らず失敗することもある。
母星は滅びかけている為に他の惑星に移住する必要があり花子は一人だけ地球を選んで移住してきた。







文化庁 令和3年度補正予算事業
コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業 AFF2 支援作品

野村有志監督作品『さなぎの猫』



www.youtube.com


www.umifilm.com



①インド・サーヴィン国際映画祭(2023年8月度)最優秀国際長編賞・最優秀監督賞
②日本・第一回赤羽自主映画祭(2023年8月26日)入選
​③インド・シッタナヴァサル国際映画祭(2023年8月度)審査員特別賞
​④インドシンガポール国際映画祭(2023年8月度)最優秀国際長編賞・最優秀監督賞・最優秀作曲賞・最優秀音響賞
⑤日本・第15回日本映像グランプリ(2023年)一次予選入選
ベラルーシミンスク国際映画祭(2023年)公式セレクション
ABCホール関西小劇場映画祭vol1(2023年)公式セレクション←NEW



【あらすじ】
猫島として有名な佐柳島に靖という一見ぶっきらぼうな男が暮らしていた。
ある時、靖はびしょ濡れで島を徘徊する花子と名乗る女と出会い、海に落として無くしてしまった「鞄」を探して欲しいと頼まれる。
その時丁度帰省中だった靖の幼馴染である千佳とその夫の清も巻き込んで、美しくのどかな佐柳島を舞台に繰り広げられる小さな騒動。
様々な場所を住む場所に選んだ者たちの人間(?)模様。


未来・過去、そして今を描く、切なくて美しい佐柳島SFヒューマンコメディ!
海外の映画祭でも高評価の日本ならではの静かなSFドラマ。



【監督・脚本】
野村有志


【出演】
浅雛拓
鳩川七海
一瀬尚代
野村有志



【スタッフ】
撮影監督・編集・製作統括 武信貴行(U.M.I Film makers)
助監督 橿原大和(120) 林知明
撮影 タニガワヒロキ
照明 竹田和哲(NOLCA SOLCA Film)
音響 浅葉修(Chicks)
音楽 浜間空洞(小骨座)
美粧 KOMAKI(kasane)
造形 久太郎(Anahaim Factory)
撮影記録 緒花(Noisy Bloom)
制作進行 篠原ひなた 三坂恵美(Booster)
宣伝美術 勝山修平(彗星マジック)
現地協力 坂川桃香
製作 U.M.I Film makers
共同製作 オパンポン創造社
配給 Booster

コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業 ARTS for the future!2採択事業
(2022年/日本映画/88分/カラー/ステレオ/​映倫番号124178 G区分)