こんばんは。船長の武信です。
イスラエルの映像配信サービス「Grindhouse」で配信中の映画『さなぎの猫』について、同サイトのMagazineに批評記事が掲載されました!
日本語の要約はこちら。
www.umifilm.com
原文記事はこちら。
grindhouse.live
記事タイトルは「שאינו נתפס(捉えきれないもの)」。
島へ漂着した謎の女性と、その存在によって静かに揺らいでいく島の人々の暮らしを、イマヌエル・カントの「崇高」という概念から読み解く内容です。
…
……
………カントときたか!!!
正直、カントの名前が出てきた瞬間、「え?大丈夫!?」と思いましたw
ビッグネーム過ぎない?しかも場違いじゃない??大仰過ぎて恥ずかしい事になったりしない???
とはいえ僕も実作家を自認している以上、他人の創造物を読まずに批判するようなことはしてはいけない。
ちゃんと読もうじゃないの!…と読み進めます。
記事はまず、カントが区別した「美」と「崇高」について説明から始まります。
「美」は、人間の感覚や理解の尺度に適合したもの。
「崇高」は、人間の想像力では一度に捉えきれないものに出会ったときに生じる、畏れや高揚を伴った感覚。
『さなぎの猫』はこうした「捉えきれないものとの遭遇」≒「崇高」を、派手な形ではなく静かに描く映画である。
…お、おう
そ、そうなんかな???
謎の女性が島へ漂着する。
映画は彼女を怪物として描くわけでも、その到来を侵略として扱うわけでもない。
彼女が危険な行動を起こすから島が揺らぐのではない。
これまで島の人々が当然だと思っていた世界の尺度に彼女が収まらないこと自体が、日常の秩序を揺さぶっていく。
つまり彼女は「既存の秩序の中に場所を持たない静かな異質さ」なのだ。
ふむ、何かちょっと分かる感じになってきたぞ…
えっと、なになに…
『さなぎの猫』は「静かなSF」である。
世界を救う物語でも、宇宙人との戦争を描く映画でもない。
だからこそ本作は、派手なアクションや特殊効果に満ちたSFよりも、カントの「崇高」に近い。
カントにとって崇高は、大きな事件にあるのではなく、人間の意識が自らの限界にぶつかる「関係」の中に生まれる物だ。
派手なアクションが未知なるものを単純な恐怖へと変えてしまうのに対し、『さなぎの猫』の静けさは、「既存の枠組みに収まらないものと出会う」という経験そのものが残る。
あ、ちゃんとSF映画として観てくれたんや!
猫映画じゃないんや!!!筆者注・猫映画じゃないです!
そして人と人との隔たりも一種の「内なる無限」である。
どれほど小さな島で隣人同士として暮らしていても、人間が他者を完全に理解することはできない。
謎の女性が現れることで、それまで日常の中に埋もれていた島民同士の距離や異質さも浮かび上がってくる。
未知なるものは海の向こうだけではなく、共同体の中にも、そして人と人との間にも存在しているのだ。
ああ、これは千佳と清のエピソードについて書いてくれてるんだな。
そんで次は佐柳島について書いてくれてんのか。
長年続いてきた生活や習慣によって形作られた、小さく閉じた世界。
そこへ、その世界の尺度には収まらない存在が入り込むことで、島全体が揺さぶられる。
カント的な「崇高」は絶対的な大きさだけで決まるものではなく、人間の持つ尺度との関係の中で生まれる。
島が小さく、住民にとって馴染み深い世界であればあるほど、そこに現れた異質な存在は大きなものとして感じられる。
『さなぎの猫』は島の小ささを利用することで、「そこに属さないもの」の存在感を強めている。
…
……
………。
『さなぎの猫』は多くの謎を解決しないまま終わる。
漂着した女性が何者なのか。どこから来たのか。
映画は、それらをつまびらかにはしない。
「謎が解決されないことは、この映画の欠点ではなく、作者たちの誠実さである」
人間の理解を超えたものに出会い、世界が言葉で説明できるものだけに還元されないと知る。
その「開かれたまま残るもの」の中に、『さなぎの猫』の「崇高」はあるのだ。
…
……
………
滅茶苦茶、ちゃんと観てくれてるやん!
ありがとう!!
。・゚・(ノД`)・゚・。
勿論、カントのことは製作当時は1ミリも考えていませんでしたが、全然違う文化圏の方から、自分たちが想定していなかったアプローチで、自分たちが目指していた「静けさ」「小さな島という舞台」「人間同士の距離」「謎をつまびらかにしないこと」といった要素を、ここまで詳細に提示してもらえる…というのは初めての経験でとても嬉しかったです!
重ね重ねありがとう!!!
『さなぎの猫』は現在、Grindhouseにてヘブライ語字幕付きで配信されています。
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『さなぎの猫』
監督・脚本:野村有志
2022年/日本/88分
原文:Grindhouse Magazine「שאינו נתפס」
https://grindhouse.live/magazine/cave-cat-pupa
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映画『さなぎの猫』
www.youtube.com
瀬戸内海に浮かぶ猫の島・佐柳島を舞台に、島へ流れ着いた宇宙からの来訪者と、少しずつ揺らいでいく島の人々を描いた、“世界を救わないSF映画”
【作品情報】
映画『さなぎの猫』2022年 88分 カラー 映倫区分G
監督・脚本:野村有志
製作統括・撮影監督・編集:武信貴行
出演:浅雛拓、鳩川七海、一瀬尚代、野村有志
製作:U.M.I Film makers
共同製作:オパンポン創造社













